小学生の葵は、電子機器メーカーの研究室で働くママと二人で暮らしている。
パパはいるけれど、友人と新しい会社を興すと言って家を出ていったまま、もう一年以上、連絡がない。
ある日、葵はクラスメイトの涼からスケートパーク取り壊しの署名を頼まれる。
スケートボードのプロ選手になって、アメリカで大金持ちになるのが涼の夢だが、そんなのバカみたいと葵は請け負わない。
ママと同じように、何かと数値化してしまう癖のある葵は、どんなことにも現実性を求めてしまい、涼のように大きな夢にチャレンジすることには及び腰だ。
そんな葵が、ふとしたことから、幼いころに少しだけやっていたスケートボードに再び打ち込むことになる。
葵には、スケートボードにまつわるパパとの思い出があった・・・。
スケートボード競技は、何度失敗しても新しい技に挑む姿勢にこそ、最大のリスペクトが払われるという。
主人公の葵も、なかなか上達せず苦しむが、スケートパークに集まる年齢も性別も様々な人たちとの触れ合いの中で、勝つことだけが目的ではない、スケートボードの本当の魅力に気づかされていく。
やがて、スケートパーク取り壊し反対のために企画された大会に、涼とともに出場する葵。
成功率の低い難しい技に次々と挑もうとする涼とは裏腹に、自分にできる技だけをきれいに決めようとする葵だったが・・・。
家族に問題を抱えた少女が、スケートボードを通して弱い自分の心と向きあっていく、小さな青春ストーリー。
何かにつけておおざっぱなパパと几帳面すぎるママの話を伏線にしながら、葵の心の成長を読みやすい文章でつづっている。
小学校中学年以上向き。