科学の力で、様々な謎を解いていくミステリー。
主人公の鈴木彰吾は、背が高く、足が長く、顔もイケていて、しかも頭もいいという、パーフェクトな児童会長を自負している。
小学六年生でありながら、思いっきりナルシストな彰吾だが、彼には、そのキャラクターをゆるがしかねない秘密があった。
それは、父親で理科の教師でもあるキリン先生の存在だ。
白衣の胸ポケットから、キリンのマスコットが首をのぞかせているため、児童たちからキリン先生と呼ばれている彰吾の父親。
どこか、おっちょこちょいで頼りない感じのするキリン先生が、パーフェクトな自分の父親だと知られたくない彰吾は、学校でも冷や汗の連続だ。
そんな彰吾を中心に、うわさなら何でも知っている副会長の山本夏鈴や、ふわふわした優しい性格でありながら、声だけ低くてハスキーな書記の安藤春奈など、個性的なキャラクターが勢ぞろいして、学校でおこるミステリーに挑戦していく。
結局、問題を解決するのは、科学の知識豊富なキリン先生なのだが、その謎解きの過程が実におもしろい、少年少女のための科学読み物。
夏休みの自由研究の題材にも使えそうなアイデアが、作品の随所にあふれている。
「わらう人体模型事件」の他に、「太陽は何色?事件」「消えたリップクリーム事件」「人魚姫のなみだ事件」の四つの短編で構成されているので、読書が苦手な子供にもおすすめの一冊。
「科学が好きになってくれる子供たちが、ひとりでも多くなってほしい」という著者の願いが伝わってくる、明るくて楽しいミステリー小説である。
どろだんごを押しつけて、「くえ」と迫ってくる、「消えたリップクリーム事件」に登場する一年生、由香と彰吾のやりとりには、思わず吹き出してしまいます。
大人の読者にとっては、児童会室や理科準備室、図書室などの学校内の描写が、昔懐かしい空気感をただよわせている点も秀逸です。
小学校中学年以上向き。