リコとリモは、小学三年生の双子の姉弟。
双子と言っても、リコは、気が強くてはっきりものを言う女の子。
そして、主人公のリモは、その正反対。
気が弱くて、運動神経も鈍いから、ちょっとしたことで、いつもビクビクしてばかりの男の子だ。
学校でも、「本当に双子なの?」と聞かれるような二人だったが、ある朝、頭のてっぺんがまるく禿げ上がっていることを気にしているお父さんが、自分は、カッパだと言い出したことがきっかけで、家族みんなを巻きこんだ事件へと発展していく。
額の上の方を指さし、これは皿だと言い張るお父さん。
バカみたいと呆れて相手にもしないリコに比べて、すっかりお父さんの言葉を真に受けたリモは、事あるごとに、お父さんが緑色のカッパに見えてしまい・・・。
ちょっと臆病で内気な男の子が、性格がまるで違う双子の姉とのやり取りを通して、少しずつ成長していく心温まる物語。
やがて、お父さんだけでなく、お母さんやリコ、さらには自分のことまでカッパに見えてきてしまう子供らしい心の描写が初々しい。
また、男の子らしさ、女の子らしさという枠組みを越えて、自分らしく、たくましく生きていくことの大切さが描かれている。
全編、ユーモアに満ちていて、とくに禿を気にするお父さんの様子が笑いを誘う。
近所の馬尻沼のほとりにあるカッパの石像や、そこに現れる謎のおばあさんなど、読者である子どもたちが、ドキドキ、ワクワクできるしかけも丁寧に用意されている。
下平けーすけ氏のコミカルな挿絵とともに、児童文学のおもしろさを教えてくれる、楽しさいっぱい、幸せいっぱいの一冊である。
小学校中学年向き。