著者:村上雅郁 絵:げみ(フレーベル館 文学の森)
中学一年生の香奈多と瑚子の出会いと別れの物語。
香奈多は、普通ならできる当たり前のことができなかったり、興味のない話をじっと聞いていられなかったりする、ちょっと風変わりな女の子。
自分のことを「ぼく」と呼んだり、ひとりでおかしなことを言ったりする。
一方の瑚子は、友達を持つこともなく、いつもぼんやりしている、こちらもまた、少し周囲から浮いた感のある女の子。
そして、瑚子は、思っている。
「なんで生きているんだろうね?あのとき、死んでおけばよかったのにね」と。
物語は、多感な二人の少女の不思議な出会いを起点にして進んでいく。
お互いに友人のいない二人。
けれども、ひとりぼっちの自分に寄り添ってくれる本当の友達を心のどこかで求めている。
そんな二人の交流は、とても初々しく、そこには、表面だけを繕ったような打算もなければ、自己中心的な駆け引きもない。
お互いをかけがえのない存在として、ありのままに受け入れていく。
だが、二人の出会いには、あまりにも奇妙な点がいくつも存在していた。
まるで、それぞれが別々の世界を生きる住人であるかのように。
題名にある「if」とは、イマジナリーフレンドのif。
そして、もうひとつ「もしも」のif。
生と死の境界線にいる少女たちの心の触れ合いが、空間を超えて生きる力を呼び覚ます。
ミステリー小説としての要素の強い本作だが、決して、謎解きを楽しむだけの作品ではない。
なぜなら、謎解きそのものは、物語の中盤で、およそあらましがわかる構成となっているからだ。
この作品のすばらしさは、なんと言っても、多感な少女たちの心の足跡を丹念に描き出した点にある。
触れ合えそうで触れ合えない、交われそうで交われない二つの汚れなき魂の叫びが、ひとつとなっていくラストに、ストーリーテラーとしての作者の実力がうかがえる。