村下李乃は、小学五年生の女の子。
今は、一年生で弟の由宇とともに長野県の伊奈地方にある母さんの実家で暮らしている。
二人の母さんは、三歳になった由宇を自動車に乗せたまま、長雨と地震によっておこった土砂くずれに巻き込まれ命を落とした。
それからは、医薬品の営業で仕事に忙しい父さんとも、離れ離れの生活をしなければならなくなってしまった二人。
由宇は、雨が降っただけでひどくおびえ、押入れの中に作った段ボールの部屋に閉じこもってしまう。
そんな心の傷ついた弟を、同じく心の傷ついた李乃は、ただ見守ってあげることしかできない。
母さんの実家の母屋の裏には、樹齢百年を超えるしだれ桜がある。
亡くなった母さんが嫁入りするまでの遠い昔、そこには、母さんが大切にしていた、ゴロスケという名前のフクロウの家族が住んでいた。
オスがメスよりも小さい、ノミの夫婦のゴロスケたち。
ところが、とっくに死んでしまっているはずのゴロスケたちが、李乃と由宇の前に姿を現わす。
あれは、もしかしたら母さんが大好きだったゴロスケたちの子孫?
準絶滅危惧種に指定されているフクロウの家族を天敵から守ろうと、李乃と由宇は、行動を開始するのだが・・・。
母さんが愛したフクロウのヒナの成長を見守り続ける中で、苦難を乗り越え成長していく姉弟の姿が、時に痛々しく時にほほえましく、そして、時に力強く生きることの意味を読者に教えてくれる。
長年、教師として子供たちを見つめ続けてきた著者による、命の営みの物語。