小学五年生の大地のクラスに、ある日、美乃という名の少女が転校してきます。
けれども、美乃は、中国からやってきた帰国子女で、日本語がうまく話せませんでした。
いつもだまったままで、学校の行事にも参加しようとしない美乃に、クラスのみんなから反感が出てきます。
大地も、かたくなな美乃の態度に、つい、いじわるをしてしまうのですが、ある日、彼女が傷ついたカラスの面倒を見ていることを知って、心の中に小さな変化がおこります。
言葉が通じない苦しさや、生まれ故郷を遠く離れたさみしさ。
そして、愛する人を失った悲しみ。
美乃の心の傷をたどっていく過程は、そのまま、他者の気持ちをわかろうとする大地の成長の軌跡となっていきます。
生まれた国がちがっても、反目を乗り越えて手をとりあっていく子供たちの姿に、大人たちが忘れかけていた大切なものを再発見させてくれる、児童文学の枠を超えた物語です。