ある日のことです。タッくんは、おとなりのカズくんとカメレオン・ファイブごっこをして、あそんでいました。
カメレオン・ファイブというのは、テレビでやっている、赤、青、黄色、緑、桃色のコスチュームを着た五人の戦隊ヒーローのことです。
タッくんもカズくんも、カメレオン・ファイブがだいすきで、二人ともカメレオン変身ベルトをもっていました。タッくんのは、ブルーレオン、カズくんのは、レッドレオンのベルトです。ベルトには、ほんものの無線機もついていて、近くなら、もうひとつの無線機をつかって話をすることもできます。
「よし、ブルーレオン。怪人をさがしにいこう!」と、カズくん。
「いそごう。怪人は公園にいるぞ!」タッくんも負けてはいません。
ところが、そのとき、タッくんの無線機がリンリンと音をたてました。
「ブルーレオン、すぐに家に帰ってきてください。怪人があらわれました」
これはたいへん!お母さんの声です。すぐにもどって怪人をやっつけなくては!同時に、カズくんの無線機にも、カズくんのお母さんかられんらくが入りました。
タッくんは、カズくんにさよならして、家の玄関をあけました。そのとたん、お母さんに「つかまえた!」とだきあげられました。なんと、怪人の正体はお母さんだったのです。
「わあっ、はなして!」
タッくんはもがきましたが、もう、どうにもなりません。きっと、お母さんは、なかなか家に帰ってこないタッくんをよぶために、怪人が出たと言ったのでしょう。カズくんのレッドレオンも、同じようにしてお母さんにつかまえられたにちがいありません。
つよいつよいカメレオン・ファイブ。でも、そのカメレオン・ファイブも、お母さん怪人にはかないません。