ある日の朝のことです。お庭であそんでいたタッくんは、足もとで何かがちょろちょろと動くのを見つけました。
「あっ、トカゲだ!」
タッくんは、生きものが大すきです。すぐに手をのばしてトカゲをつかまえました。
すると、どうでしょう。せっかく、つかんだトカゲのしっぽが、ねもとからプツンッととれてしまいました。
「うわあっ、これなんだ?」
タッくんは、びっくりしました。トカゲの頭のほうは、すぐに草むらにかくれて見えなくなってしまったのに、手のひらの中でしっぽだけがくねくねとうごいています。
タッくんは、さっそくトカゲのしっぽを虫かごに入れました。うごいているのだから、きっとこれも生きものにちがいありません。
でも、何を食べるのかわからなかったから、玄関でかっている金魚のえさを虫かごに入れてみました。それから、ごはんつぶを入れてみたり、冷蔵庫にあったバナナを少しだけちぎって入れてみたりしました。
けれども、トカゲのしっぽは何も食べてくれません。そのうち、だんだん動きかたがよわくなり、とうとう、しっぽは、ピタリととまってしまいました。
「トカゲのしっぽ、死んじゃった」
タッくんが悲しくなって泣きだすと、台所にいたお母さんがやってきて「どうしたの?」とたずねました。タッくんがトカゲのしっぽの話をすると、お母さんは、にっこりと笑って、「それならだいじょうぶ。トカゲは、危険をかんじると自分でしっぽを切りはなすことができるのよ」と教えてくれました。
タッくんは、それを聞いて、とてもほっとしました。そして、思いました。
くねくね動くトカゲのしっぽ。ミミズみたいなトカゲのしっぽ。ぼくも、あんなしっぽがほしいな。きっと、すてきにちがいないよ!って。