黄鬼くんと七夕かざり

今年も、七夕祭りがやってきました。

黄鬼くんたちも、毎年、家の庭にささを立ててたんざくをかざります。

さて、今年はどんなお願いごとを書こうかな?

迷っている黄鬼くんのとなりで赤鬼くんは、「もっと、物語の人気者になってハリウッドに行かせてください」と書きました。

へえ、ハリウッドですって!

さらに、青鬼くんなんか、「ハリウッドへ行ってアカデミー賞をとらせてください」なんて、すごいお願いを書いています。

赤鬼くんや青鬼くんのように、物語の中で目立たない黄鬼くんは、「ぼくは、物語の中でみんなに気づいてもらえますように」と、ひかえめなお願いごとを書きました。

これでよし!キラキラしたお星さまやたんざくのついた七夕かざりを見上げて、黄鬼くんたちは大まんぞくです。

でも、なんだか変だぞと黄鬼くんは思いました。

なぜって、七夕は、天の川によってはなればなれになったおり姫とひこ星がであう、一年にたった一日だけの特別な日なのです。

そんなときに、みんなで自分のことばかりお願いごとをするなんて、なんだかおり姫とひこ星がかわいそうです。

そこで、黄鬼くんは、もう一枚たんざくを書いて、ささの葉にかざりました。

「なんだい、それ?」

赤鬼くんと青鬼くんが、ふしぎそうに聞いてきます。

「七夕の夜に雨がふっちゃうと、きっと天の川をわたれなくなっちゃうからね」

黄鬼くんは、ニコニコとこたえました。

黄鬼くんの書いたもう一枚のたんざくには、こう書かれていたのです。

「七夕の夜に雨がふりませんように。そして、おり姫さんとひこ星さんが、ちゃんとあえますように」ってね。