ある晴れた夏の朝

著者:小手鞠るい 絵:タムラフキコ(偕成社)

日本の中学校で英語の教師をしているメイ・ササキ・ブライアンが教室で語った十年前の回想録。

当時、アメリカのテキサス州で高校生だったメイは、先輩たちからの誘いを受けて、コミュニティセンター主催の公開討論会に参加することになった。

人前でのディスカッションなど、自分にはとてもできないと思うメイだったが、ノーマンとスコットという、女子学生から大人気の先輩たちに熱心に説得され、どうにも、断れなくなってしまう。

ところが、ディスカッションのために、山ほどもある資料や本を読みこんだり、パソコンの前にはりつかなければならなくなったりと、そのあまりの大変さに、たちまち後悔してしまうメイ。

しかも、彼女たちがこれから討論しようとしているのは、広島と長崎への原爆投下は、本当に必要だったのか、その是非を問うという深刻なものだった。

公開討論会に参加するのは、メイを含めて八人の高校生たち。

人種も生い立ちも将来の夢も、まるで違う彼らは、全員が戦争を嫌う平和主義者であるという大前提のもと、原爆投下肯定派と否定派に分かれて四回にわたる公開討論にのぞむことになる。

人類が生み出した最恐の兵器、原子爆弾。

その原子爆弾と戦争における残虐行為をめぐり、メイたちは、訪れた観客たちに向かって、時に雄弁に、時に感情的に自分の信条を訴えていく。

回を追うごとに熱を帯びていく彼らの討論会は、はたして、どんな結末を迎え、参加したすべての人々に何を残すことになるのか。

討論会の最終盤、肯定派の勝利と思われた時におこった意外な展開に、世界平和への強い思いと、人類という視点がうかがえる著者渾身の一冊です。

学校や家庭で、戦争と平和について考えるためのテキストとして、本作をひもといてみてはいかがでしょうか?

第65回青少年読書感想文全国コンクール中学校の部課題図書。