著者:山崎貴(講談社)
主人公の坂本一樹は、クラスメイトの太一やサニーとチームを組んで、ネット対戦ゲームをやっている。
何かと「役に立たない」と言われてしまう一樹は、表面的には、つっぱって見せても、内心ではその通りかもしれないと落ちこんでいる。
まるで性格のちがう三人ではあるが、今、彼らが抱いている思いは、ただひとつ。
事故にあって意識不明の状態でいる四人目の仲間、湊の回復だ。
湊は、四人の中でただひとりの女の子だが、何をやらせても優秀だし、ゲームの世界では、だれよりも強い。
役立たずの一樹は、いつも守られてばっかりという立場だった。
そんなわけで、藁にもすがる思いで湊が元気になることを願う三人だったが、サニーが持ってきた怪しげな情報、すなわち、南の田んぼのはずれにある祠にお祈りをすると願いがかなうという、インチキ臭いうわさを試してみようということになる。
すると、その夜、寝ている三人の枕もとに「昼間の願い、かなえたいか?」という奇妙な声が聞こえてきて・・・。
長年にわたり子どもたちから愛されてきた、斉藤洋氏の絵本「おばけずかん」をもとに、「ALWAYS三丁目の夕日」の山崎貴監督が書き上げた、同名映画のノベライズ版。
小説としての完成度には、やや至らない部分も見受けられるが、何より作品の持つ読者に訴えかける力、ワクワク感や少ししんみりとさせられるところなどに、昨今の児童文学から失われつつある勢いを感じる。
物語の主役は、もちろん、一樹をはじめとする四人の子供たちだが、いっしょにおばけたちの世界へ冒険の旅に出ることになる臨時教員、瑤子先生の成長物語ともなっている点がおもしろい。
題名にある「おばけずかん」を手に、知恵と勇気で困難に立ち向かう、四人の子供たちとひとりの先生の姿がすがすがしい。