著者:田村理江 絵:佐竹美保(文研出版)
中学受験をひかえた蘭は、ある日、受験勉強に嫌気が差して町外れの野原にやってくる。
そこにたたずむ不思議な灯台の中で、燈台守をしている「航さん」というぶっきらぼうなおじいさんと出会った蘭。
けれども、その時を境に、蘭のまわりでは奇妙なできごとがおこりはじめる。
急にやさしくなった白い顔の両親や、夜の学校に集ってくる、やはり白い顔をしたクラスメイトたち。
やがて、蘭は、この世界のすべてが偽物ではないかと恐怖におちいるが、同時にもうひとつの別の可能性に気づかされる。
「もしかしたら、偽物はわたし?」
思春期を迎えた少女の多感な内面が丁寧に描かれ、読者の胸に迫ってきます。
相手の立場になって考えるということが、どういうことなのか?
そして、それがどんなにむずかしいことなのか?
野原のまん中にそびえ立つ灯台を中心に、ひとりの人間が持ついくつもの側面をあげながら、蘭という少女の心の変化を繊細につづった秀作です。
小学校高学年から中学生向き。