小学五年生の絵菜のお母さんは、「スウィート・スメル」というハンド・メイドの店を営んでいる。
もともと、ここは、亡くなった絵菜のおじいちゃんの自転車やバイクの修理店で、その一画には、こちらも亡くなったおばあちゃん、うめこさんの雑貨店「葉風堂」があった。
うめこさんが亡くなったのは、三年前。
その時のことを思い出すと、今でも涙が出そうになってしまう絵菜は、ある日、夏休み明けに転校してきたクラスメイトの夏香が、「スウィート・スメル」の中をのぞきこんでいるのを見つける。
お父さんを交通事故で亡くして以来、思うように言葉が出なくなってしまった夏香のわきには、ハートの葉を茂らせている「キャラメルの木」があった。
「キャラメルの木はね、人と人を結ぶ木なの。天に向かって伸びていく木なのよ」
生前、そう語っていたうめこさん。
「スウィート・スメル」の店先にある「キャラメルの木」が絵菜と夏香を結びつけ、やがて、小さな奇跡をおこしていく。
大切な人を失い、心に傷を負った人々が織りなす命の再生の物語。
町の北のはずれにある「こうのき図書館」の女性ラピさんとの出会いが、作品をミステリアスなものにしている。
ラピさんの胸で輝くラピスラズリのネックレスと、満月の夜に奇妙な行動をとるラピさんが、意外な形で主人公と関わっていく展開も、読者を楽しませてくれる。
キャラメルの木をめぐる、時を経た人と人とのつながりに、著者のやさしさがあふれている。
小学校中学年以上向き。